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「はあ~、やばい。マジで無理! ギブアップー!」


握り締めていたシャーペンを折り畳み式のテーブルの上に放り投げると、向かいに座っていた茉理ちゃんはそのままばたんと後ろに倒れ込んだ。

その拍子にフローリングの床に頭をぶつけたらしく、ごつんという鈍い音が響く。

ラグマットが敷いてあるとはいえ痛そうな音だなぁと思っていたら、案の定呻きながらむくりと起き上がってきた。手は後頭部に当てられている。


「茉理ちゃん、大丈夫?」

「それは課題に対して? それとも頭を打ったことに対して?」

「うーん……どっちもかな」

「幸い、頭の方は大したことないから大丈夫。心配ありがとう」

「じゃあ、課題は……」

「やばいよ、マジで大丈夫じゃない」


後頭部に当てていた手を額に移すと、茉理ちゃんはテーブルの上に広げられている5枚綴りのプリント……春休みに出された課題を見つめた。

だけどその瞳は放心している虚ろなもので、恐らく真っ白なプリントの解答欄は実際は見えていないだろう。

むしろ見ない方が、今の茉理ちゃんには幸せなことかもしれない。

……いや、まあ、見なきゃまずいけど。嫌でも向き合わないと、課題は終わらないわけだし。


放心したまま固まってしまった茉理ちゃんに苦笑しながら、自分のプリントの5枚目に視線を落とす。

それからそこにある最後の問題を解いて、綴じられているプリントの全部の問題を見直した。

よしっ、大丈夫。これで全部終わった。