そういえば以前、家庭部で作ったお菓子をナツくんに食べてもらったときも、すごく喜んでくれたっけ。

正確に言うとあれは部員のみんなで作ったものだったし、わたしひとりで作ったわけではなかったけど……。

あのとき食べたお菓子の記憶が、わたしが作ったお菓子が好きという気持ちに繋がったのも一応納得できる。


……そっか、そうだよね。

ナツくんがこんなにも嬉しいって言ってくれるなんて、それ以外の特別な理由なんてないよね。

わたしが作ったお菓子を気に入ってもらえることは、もちろん嬉しい。でも今はそれも、何だか複雑な気分で……。

ナツくんにわからない程度に、その憂いを吐き出すようにそっと息を吐いた。

思い返すと今日は、舞い上がったり落ち込んだりを繰り返してばかりだなぁ……。


「開けてみてもいい?」

「……あっ、うん」


弾んだ声で尋ねられて頷けば、ナツくんはさっそく紙袋を開いて中を覗く。

ワックスペーパーで包んである長方形のチョコバーを1本取り出して、ナツくんは正体を探るように首を傾げた。


「これは……」

「チョコバーだよ。ナッツとかクッキークランチで作ってあるの」

「ああ、なるほど。ざくざくした食感のやつだよね?」

「そうそう。……もしかして、嫌いだった?」


あまりにもまじまじと思案するようにチョコバーを見つめ続けるものだから、不安になってきてしまう。

だけどナツくんは首を横に振った。