――ナツくんに友チョコを渡しそびれた、あのあと。
ショックで抜け殻になりながらも何とか教室にカバンを取りに行った。
するとちょうど、わたしが教室に帰るのと入れ替わりに茉理ちゃんと横峰くんが出てきて。
肩を落として歩いてきたわたしを見るなり、放課後まで渡せずにいた事情を知っている茉理ちゃんが、心配そうに話しかけようとしてきた。
手には紙袋を持っていたし、渡せなかったことが一目でわかったんだと思う。
でも茉理ちゃんが口を開く前に別れの挨拶を告げて、わたしは笑顔を向けてふたりの前から立ち去った。
心配してくれているのはわかったし、そのまま頼ってしまいたいぐらい気持ちは嬉しかったけど……邪魔したくなかったんだ。
せっかく茉理ちゃんが横峰くんを誘って、今から手作りクッキーを渡そうとしている大事なときだからこそ。
わたしは頑張ることも渡すことも叶わなかったけど、茉理ちゃんには楽しいバレンタインを過ごして欲しかったから……。
そしてわたしがカバンを持って逃げるように足を運んだ場所が、今いる被服室だ。
いつも月曜日は茉理ちゃんと帰るから部活は休んでいたけど、今日はひとりだから一応部活に顔を出そうとは思っていた。サトちゃんにも友チョコを渡す予定だったから。
だけど被服室に来たからと言って、簡単に気持ちを切り替えられるわけもなくて……。
部屋に入るなり沈んでいたわたしは、サトちゃんにも心配されて、その理由を尋ねられる羽目になった。
茉理ちゃんと同様にわたしのナツくんへの想いを知っているサトちゃんには、ナツくんに友チョコを渡せなかったことを軽く説明しておいた。



