いつでも一番星



手すりを掴んで下を覗き込んだ体勢のまま、少しの間固まっていたけど、やがて来た道を引き返す。

さっきより人口密度は下がったけど、昇降口に向かう人たちの波に逆らって歩くのはまた別の意味で困難だった。


……とうとう、最後まで渡せなかった。

紙袋を持っていた指先に力が入ってしまい、端がくしゃっと音を立ててしわを作る。

その音ではっと我に返り、夢中でしわになった部分を伸ばした。

でもそんなことをしたって、虚しくなるだけ。

本来ならこれはナツくんの手に渡っているはずで、今わたしの手の中にあるべきじゃないから……。


追いつけなかった距離と、届けられなかった友チョコ。

その現実を理解するほど胸が苦しくなって、暗い闇に飲み込まれていくような気がした。



 ☆★☆



「雫ちゃん、ひどい顔になってる……」


青空が徐々に薄まって暮れていく空を見つめていたわたしの耳に、哀れんだような声が届く。

スローモーションのような動きで顔を左に向ければ、サトちゃんがわたしの顔を見て苦笑していた。

そりゃあ、そうだろう。

ナツくんに友チョコを渡せなかったショックは、まだまだ消えそうにないから。

きっとひどい顔というのは、後悔で心の中がぐちゃぐちゃになっている悲惨な表情のことだろう。

鏡で見ていなくても、大体の想像はついた。


「……」


サトちゃんの言葉に返す気力もなくて、布や裁縫道具が無造作に放り出されている机の端に突っ伏した。

重症だね……、と苦笑気味に呟かれた声が、虚しく胸に響く。