いつでも一番星



休み時間に渡そうって、思ったところまではよかったはずなんだ。

でもいざ渡そうとした、1時間目が終了したあとのその時間。

ナツくんは横峰くんやクラスの男子と一緒に教室内にいて、それはわたしにとってはかなり不都合な状況だった。

だっていくら友チョコとはいえ、周りに人がいるときに渡すのは気まずくて憚られたから。

男子の集団の中にひとりで入り込んでいく勇気も、ナツくんだけを呼び出すというあからさまな行動をする度胸も持っていなくて……。

結局そのときは断念することになって、次の機会を狙うことになった。


でも次の休み時間も、その次の休み時間も、状況は変わらずじまい。

ナツくんは誰かしらと一緒にいるというか、みんなが自然とナツくんのもとへと足を運ぶから、ひとりになるチャンスが全然訪れてくれなかった。


お昼休みのときだけは最初、横峰くんしか周りにいなくて。
そのときに渡してしまおうと思ったんだけど、やっぱりそのときも渡すことはできなかった。

……その時間ナツくんのもとには、代わる代わる女子が訪ねてきていたから。

クラスメートの子や、他のクラスの子。顔を知らない人もいたから、たぶん違う学年の子もいたんだろう。

みんなナツくんに、綺麗にラッピングを施した小包を渡していた。

遠くからその様子をひっそりと見ていた限りでは、友チョコを渡しているみたいだった。


そうだよね。バレンタインだもん。

ナツくんにチョコレートを渡したいと思っている女子は、わたし以外にもたくさんいるんだ。

男女隔たりなく仲良くしているナツくんだから、バレンタインに女子から友チョコを貰っている光景はちっとも不思議ではない。