いつでも一番星



……そっか。今日は月曜日だ。

野球部は活動が休みの日だから、放課後にふたりきりになるにはぴったりの約束なんだね。


「だから今日の放課後は、雫とは一緒に帰れないんだ。ごめんね?」

「謝ることなんてないよー! それより、横峰くんとの放課後デート楽しんできてね!」

「デートっていうほどのものじゃないけど……。でも、頑張って渡してくる!」

「うん、頑張ってね!」


さっき茉理ちゃんにされたみたいに背中を力強く叩いてみると、茉理ちゃんははにかみながら頷いた。

わたしも頑張ろうって、穏やかな気持ちになりながら思った。



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バレンタインはまだ始まったばかり……なんて、朝は思っていたわけだけど。

時刻はもうすぐ、午後3時半になろうとしている。

今は授業がすべて終わったあとのホームルームの時間で、担任の先生が座席の最前列の人たちに順番に連絡事項のプリントを配布している最中だ。

前から回ってくるプリントが自分のもとにたどり着くまで、わたしはどうしようという焦りで頭を抱えていた。


だって……まだ渡せていないから。

ナツくんへの友チョコは、未だにわたしのカバンの中で眠っている。


本当に本当に、どうしよう!

一体、どうすればナツくんに渡せるんだろう!?


表面上は冷静にプリントを受け取って後ろの席に回しているけれど、頭の中はパニックでもう何が何だかわからなくなりかけている。

朝からこの時間までに訪れた休み時間のことを思い出すと、それだけでため息が出てきた。