いつでも一番星



約束していたお菓子作りを茉理ちゃんに教えたのは、おとといのこと。

土曜日の午前中だけは部活があった茉理ちゃんに合わせて、部活の帰りに寄りやすいような高校から一番近いスーパーで待ち合わせをしたあと、そこで材料を調達してからわたしの家で練習をした。

最初は不器用だからと嘆いて戸惑いながら作業をしていたけど、そのわりにわたしが教えたことはきっちり丁寧に覚えながら作っていて。

失敗するかもと本人は心配していたけど、実際はそんな心配はまったくいらないぐらい順調にお菓子を完成させていた。

茉理ちゃんをそうさせたのは、きっと横峰くんの存在だと思う。

横峰くんに喜んでもらいたい想いが、茉理ちゃんにパワーを与えていたんだって……。

それは真剣に作業をしていた茉理ちゃんの横顔を見ていたら、十分感じ取ることができたから。


ちなみに作ることにしたクッキーは、茉理ちゃんからの要望だった。

何でも横峰くんがクッキーが好きらしく、せっかく手作りにチャレンジして渡すのなら、好きなものを渡したいんだって。

わたしも同じ理由でナツくんにはオレンジを使ったお菓子を渡すことにしていたから、すごくその気持ちはわかって、快くクッキー作りを教えることにしたんだ。

でもバレンタインに渡すのならもう少し特別感を出した方がいいかなって思って、ふたつのことを提案した。

ひとつはデコレーション。それからもうひとつは、クッキーの形。

わたしにくれた星形のクッキーは横峰くん以外の人に渡す用ってことにしておいて、彼に渡す方のクッキーだけは違う形にすることを勧めた。

相手が野球部ってことで、ボールやグラブやバットなんかの型を使うのがいいんじゃないかなって思って言ってみたんだ。