「雫がそこまで言うなら……頑張ってみようかな。さっきあれだけ雫の背中を押しておいて、自分は頑張らないっていうのはさすがにかっこ悪いし」


散々強気でわたしにアドバイスをしていた少し前の会話を思い出したのか、ばつが悪そうに茉理ちゃんは笑う。

さっきまでとはすっかり逆転している自分たちの状況を思うと、わたしも違う意味で笑えてきた。


「ははっ、ほんとだよー。わたしにアドバイスしたこと、茉理ちゃんには見本見せてもらわないとね!」

「うわあ、それは困ったなぁ!」


意地の悪い表情でからかうと、茉理ちゃんも大袈裟に困り顔で対抗してきた。

そんなお互いの表情を見ていると、どちらからともなくくすっと笑みをこぼして。
そうこうしているうちに、バレンタインに向けての緊張が少しだけ和らいだような気がした。


「……頑張ろうね!」

「うん、頑張ろう!」


……一緒に。

ふたりで意思表示のように言い合った言葉の前には、そんな言葉が隠れていたような気がする。

それぞれ想う相手は別だけれど、頑張る過程はきっとひとりきりじゃないよね。

どうかわたしたちの想い、精一杯彼らに届けられますように――。