「うーん、まあ、興味はあるよ。でも失敗するわけにもいかないから、なかなかバレンタインには挑戦できなくて……」
「じゃあ、わたしと一緒に練習しようよ! 簡単な手作りお菓子って案外いろいろあるし、練習したら苦手なこともできるようになると思うから!」
それがいいに決まってると、ひとりで納得するように小さく頷いた。
せっかくのバレンタインで、興味だってあるのに、挑戦しないなんてもったいないもん。
苦手なら、得意なわたしがお手伝いすればいい。
普段わたしの恋バナで茉理ちゃんにはたくさんお世話になってるから、こういうときぐらいは力になりたいんだ。
茉理ちゃんの意思を確認する前から張り切っていると、慌てた声で制止された。
「ちょ、ちょっと待って! ぜ、絶対無理、無理! あたしには無理っ!!」
「そんなに全否定しなくても……。やってみなきゃわからないよ? それにさ、たまには手作りにしてサプライズ的なことをしてみるのもいいと思う。横峰くんも、きっと喜んでくれるよ!」
貰っていた既製品のチョコが、いきなり手作りチョコに変わったら。
毎年受け取っていた横峰くんからすれば、かなり驚くだろう。
でもそういう変化って、結構嬉しくなったりするんじゃないかな。
彼なら例年と同じでももちろん喜ぶだろうけど、またいつも以上に特別だと感じてくれると思う。
口ではいつも茉理ちゃんと張り合っているけれど、いつだって茉理ちゃんの心に寄り添っているのは、幼なじみの彼のような気がするから。



