驚いているわたしの隣で、ナツくんは再び視線を空に向ける。

他の星が現れる前の広い空で、瞬いている一番星。
その光を目に焼きつけて真剣な表情になるナツくんは、あの日と同じように祈っているみたいだった。

わたしはそんなナツくんの姿を目に焼きつけて、それから、夕闇に染まっていく空の端で光る一番星も目に焼きつけた。

瞳に映っているのは、はるか彼方の宇宙の星。
でも心の中に映っているのは、すぐ隣にいるわたしにとって一番星のような存在だった。

小さい頃から何度だって見つけたいと思っていた一番星を見ているというのに、心が虜になっているのはナツくんの方なんだ。


「ナツくん、ありがとう。一番星が見えることを教えてくれて」


さっき慌てて呼ばれたときは何事かと思ったけど、理由がわかって納得する。

一番星が見えている時間の短さを身を以て知っているから、あんなに焦っていたんだ。


「平岡さんに一番星を見せられてよかったよ。一番星を見つけるたびに、いつも平岡さんにも見せてあげたいなって思ってたから」


ナツくんが穏やかな声で告げたのは、わたしには十分すぎるしあわせな言葉だった。

さっきまでの行動がわたしのためだったと感じられて、それだけで嬉しくなる。


「……ありがとう」


ナツくんの顔を上手く見られないまま、小さく呟いた。


人から見れば、たかが一番星と思うかもしれない。

でも、わたしにとっては特別で。
しかもその存在が今この瞬間、わたしをナツくんのそばにいさせてくれている。

ナツくんにとって一番星が、わたしを思い浮かべるきっかけになってくれたから……。