「……ったく、もう。勝手なんだから。……あたし、ちょっとあいつのところ行ってくるわ。ヨーヨーも釣れたことだし」
茉理ちゃんは呆れたように言葉をこぼす。
だけど本心では気にかけているみたいで、視線はもうすでにあとを追っていた。
「雫とナツはゆっくり釣ってて。あいつの面倒はあたしが見とくから」
「あ、うん。釣り終わったらあと追っかけるね」
「りょーかい。じゃあ、またあとで」
茉理ちゃんはわたしとナツくんの顔を交互に見てにっこり笑うと、ヨーヨーを上下に跳ねさせながら、軽快な足取りで横峰くんのもとへ移動していった。
まだヨーヨーを釣っていなかったわたしとナツくんだけが残り、プールの周りはちょっとした静けさに包まれる。
「……」
……ちょっと待って。
もしかしてわたし、今、ナツくんとふたりきり?
予想していなかった展開に、急速に鼓動が反応する。
ぎこちない動きで右隣にいるナツくんに目を向けると、ナツくんもわたしを見ていた。
目が合って、ドキッと胸の中心が熱くなる。
「平岡さん、狙うヨーヨー決めた?」
「あ、えっと、まだだけど……。ナツくんは決めた?」
「実は俺もまだなんだよねー。これだけいろんな水風船があると迷っちゃうよな」
ナツくんは苦笑しながらも、楽しそうな声でプールに視線を移した。
ヨーヨーを追う瞳が真剣で、ナツくんが慎重な性格だというのがわかる。
その様子を見て、わたしも倣うように意識を右隣からヨーヨーへと戻すと、懸命に狙うヨーヨーを決めた。
会話のおかげか、緊張はいつしか和らいでいた。



