完全に困り果てている後輩に、何とかおまけを貰えないかと交渉している横峰くん。
あまりの必死さに、思わず苦笑いが漏れた。
……そっか、おまけ貰えないのか。
ふたりの会話を聞いてそばにあった立て看板に目を向けると、在校生にはおまけがないことが、注意書きとして記されていた。
それを知ると、水風船を選ぶ目が余計に慎重になる。おまけに執着する横峰くんの気持ち、わからなくもないかも。
「もう、唯斗ってばわがまま言わないの! そんなに欲しいなら、もう1回挑戦すればいいじゃん」
わたしの左隣にいた茉理ちゃんが、喚いている横峰くんの背中を慰めるように叩いた。
そしてその状態のまま、もう片方の手で器用に水風船を釣り上げる。
水色の水風船を手にして得意気に笑った。
「やったー、ゲット! ふふん、羨ましい?」
「別に羨ましくないですー」
顔の前で水風船をゆらゆらと揺らしながら自慢する茉理ちゃんに、横峰くんは不貞腐れた声で返す。
言葉のわりにすごく仏頂面で、ついつい声を出して笑いそうになった。
両隣にいる茉理ちゃんとナツくんは、くすくすと小さく声を漏らしていた。売り子の男子は苦笑いだ。
「……水風船はもういい。俺、射的してくる!」
笑われて恥ずかしくなったのか、それとも開き直ったのか。
横峰くんは勢いよく立ち上がってそう言い残すと、ひとりで先に移動してしまった。
ヨーヨー釣りの向かい側にある射的のコーナーへ、大股で歩いていく。



