「……なんか、その話を聞いたらよくわかるかも。平岡さんが、今でもずっと一番星を見つけるのが好きだって気持ち」


ナツくんが再び空に目を向ける。

その表情は穏やかなはずなのに、力強い意志が滲み出ているように感じた。

真っ直ぐ確かに一番星を捕らえる瞳は、まるでひとつ星と同じように輝いていて。
わたしが憧れているナツくんの独特のオーラを、肌が身近で感じ取る。

熱く力強いオーラに、胸がドキッと跳ねずにはいられなかった。


「俺もまた……見つけたい。たとえ難しくてもずっと、あの一番星を。平岡さんの話で、そう思えてきた」


ナツくんは星を掴むように手を伸ばす。

もちろん閉じた手のひらの中には何もないのだけど、ナツくんにしか見えない何かはすでにその中にあるような気もした。
それぐらい、握り締めた拳は力強い。


もしかするとナツくんは、叶えたい願い事があるのかもしれない。

それを察することができるほど表情は真剣で、声にも静かに熱意がこめられていた。

だけどもちろんナツくんは、その心に突き立てた決意のような想いを、わたしの前では口にしない。

願い事は繊細な想いなんだから、無理に教えてほしいとは思わない。

そう自分に言い聞かせるけど、やっぱり心のどこかではそれを寂しく思う自分がいる。

こんなの…… 自分勝手でわがままだよね。


「願い事、きっと叶うよ。ナツくんの祈り……一番星に届いてると思うから」


無我夢中で一番星を見つめ続けるナツくんにそう声をかければ、驚いたように勢いよく振り返ってわたしを見てきた。

……あ。
もしかして、一番星に祈ってることに気づかれてないと思ってたのかな?

気づいていないフリをしたほうがよかったのかな……。