「私はここにいる。現実だ」
「・・・・・・っく」

 涙が零れそうになるのを必死で堪えていると、エメラルドがグレイスの目元を拭った。

「あの・・・・・・」

 エメラルドが手を止めて、グレイスをじっと見ている。
 もう大丈夫であることを告げても、彼はそれを信用していない。

「何の夢を見ていたんだ?」
「それは・・・・・・」

 言いたくないことを伝えると、紅茶を飲むことを提案して、休憩室へ行き、その準備を始める。
 紅茶の缶やティーポット、ティーカップなどを用意して、慣れた手つきで紅茶を淹れる。優雅な動きに見惚れながら、小さな溜息を零す。

「どうぞ」
「いただきます・・・・・・」

 紅茶をゆっくりと飲むと、一気に喉が熱くなる。
 エメラルドの紅茶はいつも美味しく、彼のように美味しく淹れる練習を密かにしている。彼に紅茶を飲んでもらったことは何度もあり、一度も味に対する不満を言われたことがない。

「どうしてそんな顔をするんだ?」

 首を傾げると、エメラルドはグレイスの瞳を見つめる。
 瞳の奥に別の感情ーー悲しみのような、苦しみのようなものがグレイスを縛っているように見える。

「ん?」
「だから、どうして苦しそうな顔をしているんだ?」

 何に苦しめられているのか知ろうとすると、グレイスは途端に笑顔を作る。
 ただ怖い夢を見ただけで、エメラルドの紅茶を飲んで、落ち着きを取り戻したから、もう心配ないことを言った。
 エメラルドが紅茶を飲んだ後、グレイスに気になっていることをぶつけてみた。