「・・・・・・っ!!」
「アクア!」

 目を覚ますと、エメラルドの手がグレイスの頬を撫でている。その手を払う気にもならなくて、ただ呼吸を整えている。

「私がわかるか? アクア!」
「はぁ・・・・・・」

 震える手でエメラルドに触れると、彼はその手を掴んで、自分の頬に押しつける。
 自分はここにいる、そんな風に言ってくれているようで、グレイスはほんの少しだけ落ち着きを取り戻した。

「かなり魘されていたな・・・・・・」
「夢・・・・・・?」

 声が掠れているのは自分でもわかったくらいにひどかった。

「さっきのは・・・・・・夢なの?」
「そうだよ」

 目の前にエメラルドがいることが現実だと、グレイスを抱きしめながら彼は教えてくれる。

「本当?」
「ああ・・・・・・」

 自分のことだけを見て、現実だと受け止めるように促される。グレイスは彼の手を握りしめながら、右目を手で覆う。
 実はこれも夢の一部で、エメラルドが泡のように突然消えるかもしれない。そんな不安に襲われて、手を震わせている。

「不安になる必要はない」
「本当に?」

 ついさっきまで恐ろしい夢を見た。その夢はただの夢ではなく、過去に実際に起こったことだ。