靴音を一回鳴らして、近づいた次の瞬間、鞭で打つ鋭い音と同時に焼けるような痛みが走り、悲鳴を上げた。

「僕の言うことを聞いてくれたら、すぐにやめるし、外してあげるよ。どうする?」
「・・・・・・はぁ」
 
 止めていた息を吐いていると、背後からクルエルが囁いてくる。心が折れそうになる度に聞こえてくるのはミルドレッドの声。
 その声を思い出して、グレイスが激しく首を横に振ると、全身凍りつくような寒さが広がる。

「学習能力の欠片もないね・・・・・・」
「やめっ!」
「五月蝿いな・・・・・・」

 何発打たれたのか、数えてなんていられなかった。
 何度もやめるように懇願しても、クルエルは決してやめてくれない。痛みは強くなっていくばかりで、それがずっと続いている。
 グレイスのことを誰も助けてくれない。自分ではどうすることもできない。

「もう嫌・・・・・・」

 暗い日々を送っていたある日のこと、窓から怪我を負っている鳥が飛んできた。
 今はグレイスだけで外にも見張りはいない。それに今日は拘束されていないので、手足を自由に動かすことができる。
 痛みを堪えている鳥はグレイスに向かって鳴いた。助けを求める鳴き声にグレイスはドレスの生地を破いて、怪我の手当てをした。

「ごめんね、これだけしかできないの・・・・・・」

 鳥に謝罪をすると、男の気配が近づいてきたので、グレイスは慌てて鳥を外に逃がした。
 この後も気が狂いそうな苦痛を受けることになり、悲鳴が響いた。