黄昏の特等席

 邪魔者を消したクルエルの機嫌が直り、泣き叫ぶグレイスを引きずりながら、家に戻った。
 クルエルに引きずられ、案内された場所はいつもグレイスが使っている部屋ではなく、別のところだった。
 あまりにも非情な仕打ちに混乱するばかり。どうしてこうなってしまったのか考えても、答えを導くことができなかった。
 
「また後で来るから」
「ミルドレッドさん・・・・・・」

 掠れたグレイスの声はクルエルに届かず、彼は自分のものになる道を選ぶまで、決して出さないことを言って、去って行ってしまった。グレイスはミルドレッドや今までのことを考えていると、洪水のような涙を流し続けた。
 どんなに強く大切な人達の名前を呼んでも、もう彼女達に会うことはできない。
 閉じ込められてから想像していた通り、質素な食事に変わって、一日三食がクルエルの機嫌の悪さで一食あるいは二食になる日もあった。
 クルエルはグレイスのところに来る度にグレイスを口説いたり、脅したりしてくる。精神的に弱っているグレイスは何度もクルエルの恋人になることを考えるものの、ミルドレッドにそれが大きな間違いであることを強く言われたことを思い出して、拒み続けている。

「どうして・・・・・・どうして僕のものになろうとしないの・・・・・・?」

 自分がここまでしているのに、どうしてグレイスは頷いてくれないのか、クルエルには理解できずにいる。
 触れようとしても嫌がられ、口説いても嫌がられてしまい、クルエルの怒りは膨らみ続け、ある日それが爆発した。