黄昏の特等席

 思った以上に距離が長く、ようやく半分以上歩いたと思っていたとき、ミルドレッドの足が急に止まったので、グレイスは彼女の背中にぶつかった。

「どうし・・・・・・」
「嘘でしょう・・・・・・」

 青ざめた顔でミルドレッドが見ていたのは前方にクルエルとその部下達が待ち伏せている。
 遠くにいるクルエルはかなり怒っていて、グレイスもミルドレッドも何も言えなくなってしまった。

「あ、あ・・・・・・」
「どこへ行こうとしているの?」

 二人が返事を返さないので、クルエルはますます皺を深くしている。

「・・・・・・聞いている?」

 今まで聞いたことがないくらい低い声を出して、ミルドレッドとグレイスを睨みつける。

「もう少しなのに・・・・・・」

 ミルドレッドの呟きはグレイスだけ聞き取ることができた。

「素直に戻ってきて。二人のようになりたくないでしょ?」

 誰のことを言っているのか、そのことにすぐに気づかなかった。

「ふ・・・・・・?」
「あ・・・・・・」

 彼が言ったのは先回りしてくれていた仲間達のこと。クルエルが怪我を負わせて、後のことを他の部下達にしてもらっていることを聞かされた。
 二人とは今日もお喋りをしていた。その二人が怪我を負わされたことを知り、頭の中が混乱している。
 グレイスが泣きそうになっていると、クルエルは素直に自分に従うように命じてきた。断れば、無理矢理引きずって帰ることも言われた。