黄昏の特等席

 言葉が出てこない。エメラルドを見ると、グレイスが何か言うのを待っている。

「だって・・・・・・好きじゃないから」
「誕生日を教えてくれたら、君にプレゼントを贈ることができるのに・・・・・・」

 グレイスは無表情で、エメラルドの不満を聞き流した。

「まあいい・・・・・・。いずれわかるだろう」
「人に何かを贈ることが好きなの?」
「好きだよ。それに・・・・・・」

 すると、エメラルドはグレイスに近づき、耳元で囁く。

「アクアの喜ぶ顔を見たいんだ」

 グレイスの真っ赤な耳を見て、エメラルドはそこにキスを落とす。
 声と顔を上げたグレイスに顔を近づけようとすると、グレイスは彼の腕からするりと抜けて、逃げ出した。
 初々しい反応に、エメラルドはくすくすと笑った。

「・・・・・・あなた、誰にでもこんなことをするの?」

 エメラルドとの距離を保ちながら、グレイスは疑問をぶつける。

「まさか」
「本当に?」
「本当だ。興味のない娘にはしない」

 厄介な男に興味を示され、グレイスは頭痛を覚えた。

「ところで、君はどうしてここのメイドになったんだ?」
「それは・・・・・・」

 心臓が大きく跳ねて、目を見開いてエメラルドを見た。
 
「あなたに関係ない・・・・・・」

 突き刺さる視線を感じながら、グレイスは掃除道具を取りに行った。