黄昏の特等席

 約三十分後に食事を済ませて、食器類を片づけようとすると、エメラルドはグレイスに触らせないで、魔法で消した。目を丸くするグレイスに微笑みかけて、親指でグレイスの唇を拭った。

「ついていた」
「気づかなかった・・・・・・」

 グレイスは顔を赤く染めて、自分の手で唇を拭う。

「こんなことなら、唇で取るべきだったかな?」
「変なことを考えないで」

 図書室へ戻ろうとすると、エメラルドに手を掴まれた。

「何?」
「食べたばかりだ。まだ休んでいい」

 眠そうに欠伸をしているエメラルドの顔を見て、グレイスは小さく笑った。

「何がおかしいんだ?」
「欠伸をしたとき、ちょっと子どもみたいで可愛らしかったから」
「君ね・・・・・・」

 そんなことをエメラルドに言うのはグレイスだけだ。

「私は子どもではない」
「そうね」
 
 確実にエメラルドはグレイスより年上に見える。

「君は二十歳くらいか?」
「違う」

 グレイスは大人びた顔なので、いつも実際年齢より上に見られてしまう。
 
「十七歳よ。あなたとどのくらい離れているの?」
「私は二十五歳だ」

 グレイスとエメラルドは八歳離れていることになる。
 エメラルドはグレイスの誕生日も知ろうとしたので、まだ先であることだけ言った。

「おや? 教えてくれないのか?」
「教えたりしない」
「どうして?」