黄昏の特等席

「君にだったら、悪くないな」
「どうしてそんなことが言えるの?」

 おかしな趣味を持っていることだけは考えないようにした。

「本当のことだから」
「少しは嫌がってよ・・・・・・」

 それにグレイスがしてきた場合、エメラルドは倍返しをする気でいる。

「・・・・・・やっぱりしない」
「つまらないな」

 残念そうにしているエメラルドを見て、グレイスは水を飲んだ。
 グラスが空になると、鳥類図鑑を広げて、広い空を飛んでいる鳥達の写真ばかり集めたもので、グレイスが知らないものばかりだ。
 写真の下には鳥について詳しい説明が書かれていて、それを読む。別のページを捲ろうとすると、大きな手が邪魔をしている。

「読みたいの? 邪魔をしたいの?」
「両方だな」

 何か言い返そうとしたものの、それだとエメラルドのペースに引きずり込まれるので、グレイスはそのページを開いた状態で、彼に図鑑を差し出した。
 今開いているところは美しい声を持っている鳥のページで、文章を読んでいる。
 休憩の時間はまだあるので、別の本を取りに行こうかどうしようか迷っていると、彼に声をかけられた。

「何?」
「何度もこっちを見ていたからな」

 エメラルドを全然見ていなくて、本を何度も見ていたことが不満のようだ。