黄昏の特等席

「グレイスお嬢様、申し訳ありませんでした・・・・・・」

 土下座したまま涙を流しているミルドレッドに、グレイスは何度も首を横に振った。
 グレイスはこれっぽっちもミルドレッドのことを責めてなんかいない。むしろ感謝しているくらいだ。あの恐ろしい男に逆らって、グレイスを助けようとしてくれたのだから。
 しばらく泣いていたミルドレッドは目を泣き腫らしてしまっているので、顔を洗うようにエイデンが促した。
 顔を洗い終えたミルドレッドにグレイスはエイデンやブライス達に助けられて、彼の屋敷でどのように過ごしていたのかを話した。
 話をしていると、たまにミルドレッドはふっと笑みを零しているので、グレイスも笑った。
 グレイスが話を終えて、そろそろ屋敷に帰ろうと腰を上げた。

「ミルドレッドさん」
「はい」
「今度、一緒に甘いものを作りませんか?」

 グレイスとミルドレッドはいつか一緒にスイーツを作りたいことを話していたことがあった。

「ザッハトルテ・・・・・・」
「もちろん喜んで!」

 グレイスはミルドレッド、ラッドとまた会うことを約束してから、家を後にした。

「エイデン、先に屋敷に戻っていなさい」

 屋敷に近づいてきたときにブライスがエイデンに命じた。