部屋が一気に静かになって、大きな靴が視界に入ってきたと思ったら、きつくブライスに抱きしめられる。

「く、苦し・・・・・・」

 腕の力を緩めるように頼んでも、彼は少しも力を緩めてくれない。

「苦しい・・・・・・」
「ブライス様、お嬢様が苦しがっておりますよ?」

 ブライスに声をかけたのは先程グレイスを助けてくれた使用人。
 二人になりたがっているブライスと混乱しているグレイスを見て、微笑んでから二人きりにしてくれた。

「エメラルド・・・・・・」
「嫌だ。離れるな」

 さっきよりも力が強まり、全然隙間がない状態。

「どうして、あなた・・・・・・」

 自分をずっと騙していたのではないかと問うと、彼は肯定する。

「騙し続けていた」
「ちゃんと・・・・・・説明・・・・・・」

 クルエルがいなくなったことで安心しているのか、急に眠気に襲われる。

「説明を・・・・・・」
「わかった」

 日を改めてきちんと説明することを言ったブライスはグレイスを横抱きにして、歩き出す。

「どこ行くの?」

 不安になっているグレイスに何も心配ないことを告げる。

「部屋に戻るだけだ」
「本当?」

 おかしな場所に連れて行ったりしないか考えてしまう。

「本当に部屋に戻るの?」
「ああ」
 
 だからもう目を閉じるように言われ、グレイスはその柔らかな声を聞いてから、意識を放した。