さくらの花が咲く頃に


「りらちゃんのお弁当すごい!美味しそうだね」

「ほんとだ!自分で作ってるの?」


今は昼休み。

社交的な茜が、席の近い子達に声をかけて、一緒にお昼ご飯を食べてるの。

私一人で疎外感を感じていたけど、クラス替えをしたばかりだから、みんな不安なのよね。

そう思うと、なんだか不安が薄くなる。

友達が出来るかと心配だったから、とても嬉しい。

それに、みんなとてもフレンドリーだし。

まあ、品がなくて失礼だといえばそうたけど、人間界というのは、どうやらそういう場所らしいわ。

昨日の私の自己紹介の時のアレも、それ故だったのね。


「い、家の人が作ってくれたの。私はお料理なんて出来ないよ〜」

「お母さん?料理上手なんだね!」

「料理が趣味みたいな感じだから…ね?」


そういえば、マーガレットは早起きして楽しそうにお弁当作っていたなあ。

マーガレットはお使いさんだからこれが仕事だけど、世の中のお母さんは、娘のためにわざわざこんな小さな箱に詰めて作っているのね…。

ちなみに、私のお母さまは、料理は大の苦手で、若い頃に料理を習おうとして手を大火傷したことがあるらしい。

それ以来、王宮では、お母さまを調理室に入れてはいけないことになってるんだとか。

幸い私にはそれは遺伝しなかったみたいで、簡単なお菓子作りくらいならできる。


「茜のおかず美味しそうだね!」

「卵焼き食べる人いる?」

「見て、今日は頑張ったの!」


別のクラスだった時から、交友関係はあったみたいね。

だから、こんなにすぐお喋りできるのか。

でも、みんなでお弁当を広げるというのもなかなか楽しいわね!

賑やかな感じは同じだけど、魔法学校は学食のカフェだったし。

それに、自分で作ってくれば、お料理の勉強にもなるのね…。

私もマーガレットに習おうかなあ。

でも、マーガレットの趣味を奪ってしまうのも何だし…。

まず、リヒトに止められるだろうし……。


「ねえねえ、5組にも転校生きたんだって」

「私、見たよ。すごいイケメンだった!」


あら。

それって、リヒトのこと?


「イケメン?ほんと?私も見に行こう!



イケメン…って何かしら?

リヒトの形容詞に使うんだから、冷静とか冷酷という意味を持っているのだと思けど。

でも、冷酷なヤツと、わざわざ会ってみたいと思うかしら?

だいたい、〝見たい〟って、リヒトは見せ物じゃないのよ!

やっぱり、人間界の失礼さにはついていけないわ!