さくらの花が咲く頃に

「りーらー!」


私を呼ぶ声にハッと顔をあげると、茜が隣の席から覗き込んでた。

あら。

本格的に寝てしまっていたみたいだわ。


「今…何時…?」

「一時間目終わったところだよ。次は集会だから体育館に移動!一緒に行こ!」

「あ、ええ、そうね。体育館ね」

「別に集会も寝てて平気だよ」


茜がそう言って笑う。

あ、ああ!

だんだん思考がはっきりしてきて、私は重大(?)なことに気がついた。

私、思いっきり寝てしまったけど、隣の教室からリヒトに見られてるのよね!?

あの性格の悪いヤツのことだもの、からかうネタが出来たと喜んでるはず…。

不覚だわ……。

今晩の夕食のテーブルで、わざとマーガレットの前で言うのよ。

『そういえば今日、授業中に寝てらっしゃいましたね?人の話はきちんと聞かなければなりませんよ』

余計なお節介だわ!!


「つ、次は寝ない!」

「そう?」


茜は不思議そうに笑って、席を立った。

私も後に続く。

体育館で、集会ね。

……あれ?

集会って、みんなで集まるものよね?

…もしかして……


「茜、集会って、学年全員?」

「そうだよ。きっと二年生になったんだから、きちんとしなさい!とか言われるだけだけどね」


全身にビビっと電気が走る。

それなら、彼を探せる…!!

ついに、10年間我慢していた願いが叶うんだわ…!

急にドキドキしてきて、息が苦しくなる。

今日の通学中も、彼を探しながら歩いたし、学校に着いてからも探してたのに見つからなかったの。


…少しだけでいいのよ。

彼が素敵に成長してるのを見られれば、それでいいの。

リヒトがいうような、それ以上のことは望んで…いない。


「りら?どうしたの。体育館はこっち」

「あ、間違えちゃった。ずいぶん入り組んでるのね、この学校」


……なんて言いながら、笑って見せるけど、喜びと緊張で指先が震えてる。

そんな心の内を知られないように、普通通りに振る舞うけれど…

ああ、だめだ。

ずっと望んでいたことなのに、いざその時になると不安になってしまう。