さくらの花が咲く頃に

「まあ!すごく大きなお家ですね…」


隣でマーガレットが驚きの声をあげた。

そして私も絶句。

こんな家、三人じゃ大きすぎるじゃないの!


「どうやら国王が張り切られたようですね」

「そ…そうね…」


張り切りすぎよ、お父さま。


「か、管理は私が頑張りますわ!リラさま、さっそく入りましょう!」

「ええ!」


お父さまから預かった鍵を、突っ込んで回す。

ガチャンと重たい音がして、ドアが開いたようだった。

ドアを押し開けると、ギギィ…と音がした。

ずいぶん…古いのね…。


「王さまのご意向で、人間界のヨーロッパという地域の古い時代の建物を真似たそうだ」

「ヨーロッパ…聞いたことあるわ」


家に入ると、そこは大きな玄関ホールだった。

正面に階段が続いている。

その奥の壁には、ステンドグラス。

階段は二手に別れ、左右に伸びている。


「リラさま、リビングはこちらですわ」


ドアを開けて回ったマーガレットが、一室のドアを開けてそう言った。

入ってみると、その部屋にはソファが並んでいて…


「…ねえ、何だかお城と同じ感じじゃない?この家の雰囲気…」

「私もそう思いました…」

「ヨーロッパと魔法界は類似点が多いそうだ」


リヒトはそうぼそっと言うと、部屋から出ていこうとした。


「どこ行くのよ」

「リラさまの手荷物、いつまで俺が持ってればいいんですかね。部屋を探して置いてきます」


あら、忘れてた。


「待って、自分の部屋は私が初めに見たいわ!私も行く!」

「ではリラさま、私はお紅茶をいれてますわ。お屋敷を探検なさってくださいな」

「行ってくるわ」


そんな会話をしているうちにもリヒトはもう部屋を出ている。


「リヒト!待ってと言っているでしょう!」


慌てて追いかけて、振り返りざまに言う。


「マーガレット、人間界でもあなたのいれる紅茶が飲めて嬉しいわ」

「リラさま、私も嬉しいですわ」


マーガレットはにっこり笑ってくれた。

ちなみに、マーガレットは私より二つ上の年で、五年前から私についてくれている。

リヒトは、なぜか生まれた時から一緒で、マーガレットと同い年。

あれ…高校に通うって…リヒトには年齢的に無理があるんじゃ…?


「行くんですか、行かないんですか」


階段の上からリヒトの声がする。


「今行く!」


私は木の階段を、トントンと登っていった。