さくらの花が咲く頃に

「リラさま、お洋服などの持ち物は、人間界に合わせるのですよね?」

「ええ、そのつもり!家でも、人間ぽくしていたいわ」

「では…こちらで着ているドレスは全部おいていくという事ですか?」

「うーん…」


マーガレットが少し悲しそうに言う。

いつも、私のドレスを選んでくれるのはマーガレットの仕事で、それがマーガレットの楽しみになっていることを知ってる。


「少しは持って行こうかな。きっと恋しくなるでしょうしね!」

「わかりました!こちらで見繕いますね」

「うん、お願い」


マーガレットの顔が、パッと輝くのがわかる。

もう、単純なんだから。

でも、その笑顔がとても好きだわ。

その笑顔とは対象的に、無表情の男が口を開く。


「リラさま、向こうでは魔法は禁止で?」

「あ…聞いてないわ。でも、お父さまは何も言ってなかったから使えるのじゃないかしら…」

「そうですか…あとで確認しないと。まあ、目立つから大きなものは使えなくなるでしょうがね」


そうかぁ…

人間界へ行ったら、空を飛んだりは出来ないのね。

まあ、それもいいかな。

少しは不自由な生活を送ってみないと!


「リラさま、私、少し失礼しますね」

「はーい」


マーガレットが部屋を出ていくと、私はボスン、とベッドに体を乗せた。

…このベッド、気に入ってるんだけど、持っていけるかしら…。


「リラさま」


無表情男が近づいてきて私の視界に入った。

私の顔を上から見るなんて、いいご身分ね。


「何?」

「…人間界へは、長くは留まれない。一年だけです。一年後には、こちらへ戻ってきます」

「…知ってるわ」

「そして、あなたは国王の決めた相手と結婚する」

「何が言いたいの」


私は反動をつけて起き上がった。

近くに迫ったリヒトの顔を、まっすぐに見つめる。


「要するに、向こうで恋をしようと思っているのなら、諦めろということです」

「…そんなこと、思ってないわ」

「これは、俺の推測だが……10年前の彼に会いに行くのでしょう?」


!!

リヒトがなぜ、彼を知っているのだ。

心を読まれた?


「これは推測です。人間界で接触した人間といえば、10年前の実習の彼しかいない。そして偶然にも、南青葉高等学校には、その彼がいる」

「……」

「わかっていればいいのです。そのお体を、穢さぬように」


リヒトは一礼すると、音もなく部屋から出ていった。

リヒトには、ばれていたのか。

そうよ、私は彼に会いたくてその高校を選んだわ。

でも、私の恋愛事情なんて、あなたが口出すことじゃないでしょ!

わかってるわよ。

私に残されたのはこの1年だけ。

明後日の17歳の誕生日から、1年だけの猶予期間。

どうすごそうと、勝手でしょう!