「おい!悟か?帰ったのか?」
何週間ぶりかに帰宅した親父。
普段どこで何をしているのかなんて
俺は知らない。
昔からそうだ。
久しぶりに帰ってきたかと思えば酔っ払って絡んでくる。
リビングの扉を開ければ耳を塞ぎたくなるほどの声のボリュームに包まれる。
「悟ー!!なんだ?デートか?
どんな女だ?早くいい女を見つけろよー!はっはっはっ楽しいなー」
こんな姿はいつもの事だから
何にも気にならない。
いつキレだすか、いつ笑いだすか…
それがわからないから
基本的には無言で自分の部屋へ向かう。
「悟!!俺なぁ、車買っちゃったんだよ!いいだろ?羨ましいか?
それでだな~家賃が払えないからよ…
今月から家賃や光熱費、お前が払え!ちゃんと払えよ?じゃなきゃ俺と母さんが帰ってくる場所がなくなるからな!」
高笑いの親父に背を向けて部屋に向かった。
現実はいつだってこんなんで
こんな運命の元に生まれた自分が嫌で仕方ない。
ここから抜け出す方法なんてあるのだろうか…

