°°ワガママの果て°°

いつもの様にふざけ合って
笑いあってじゃれあって…
過ぎていく時間はアッという間で…


わたしの右側で笑う悟くん。
バイバイを言うのが切なくて
もう少しだけ…もう少しだけ。



左側のポケットの中
ブルブルと響く着信のバイブをもう何回太ももに感じたかな。



電話の相手は父か母だとわかっている。
だからわたしはバイブ音をかき消すように悟くんを笑わせる。





それでもやっぱり伝わってしまう振動が切なさをより強くする。






「お前の携帯ずっとなってるけど…
大丈夫?」



「うん……そろそろ行かなきゃ」



寂しい気持ちを胸の中に押し込んで
またねと唇を重ねる。


こんな時ばかりは
携帯電話なんて壊れてしまえばいいと思ってしまう。



恐る恐る画面を見るとそこには
父から恐ろしい回数の着信があった。




深いため息を一回ついて
父に電話をかけ直す。


コールする間もなく父の低い声が耳に刺さる。


「なにをやってるんだ?!
母さんが倒れたんだぞ!!
とにかく早く帰ってこい」





サーッと気が遠くなり
貧血みたいにくらっとした。
急がなきゃいけないのに
一歩踏み出す足が重い。