「何故ここに?」


艶やかなな黒髪と白衣のモノトーン。
すらりと背が高く、天使の笑みで私を見つめるその姿。

忘れるはずがない。


「あああ、あの!白衣と傘を返しに…」


光のプリズムが、網膜を焼く。

心拍数は一気に急上昇。


「あぁ、返してもらわなくて良かったのに。カゼ引きませんでしたか?」


「お陰様で!!あの時はありがとうございました」


ここで会えるなんて、やっぱり運命なんだと感じてしまう。


「いえ、たまたま通りかかっただけですから。せっかく洗濯してくださったみたいですが、この白衣は捨てます」


私はキョトンとして彼を見た。
漂白剤につけてから洗濯して、アイロンまでかけたのに…


「雑菌だらけですから」


にっこり笑う彼は、悪魔に早変わりする。
頬に触れる乾いた空気が、より一層冷たくて。
私はマフラーに顔を埋めて俯いた。

雑菌だらけと言われようが、やっぱり私は好きだ。この気持ちに間違いなどない。


「わざわざ届けていただきありがとうございました。では、失礼します」


淡々と踵を返した彼の背中に、私は叫んだ。


「私!あなたに一目惚れしました!!」



.