近くの自動販売機でジュースを買ってあげて、ベンチに座った。

ジュースを飲み始めると、たちまち涙が止まる。
やっぱり、子どもだなあ、と思ってちょっと笑った。



「……ありがと。」


「いいえ。」



気の強そうなその女の子は、はっきりした声で私にお礼を言ってくれた。



「何年生?」


「一年生。」


「そう。しっかりしてるね。」



その子は、私を見上げた。



「お姉さん、何ていう名前?」


「え?私は、瞳子。」


「瞳子さん。」


「うん。あなたは?」


「私は、薫(かおる)。」


「薫ちゃん?」



こくり、と頷くと、柔らかそうな髪がしなやかに揺れる。
どこか強い意志を持つような、その子の瞳に、私は吸い込まれそうになる。



「瞳子さん、お父さんいないの?」


「そうだよ。」


「私もね、ほんとは……、お母さんがいないの。」


「薫ちゃん……。」


「でもね、みんなが言うように、お父さんとお母さんがけんかして、出て行ったんじゃないよ。……お母さんは、私が小さい頃に病気で死んじゃったの。」


「そうなんだ……。」



悲しいことを、淡々と話す彼女。
その小さな胸に、どれだけの悲しみを抱えているのだろうと思うと、私の方が泣きそうになる。



「だけどね、お母さんがいるっていうのは、ほんとだよ。」


「え?」


「お母さんはね、いつもいるの。お空の上で、いつも私を見てるの。」


「そうだね。」


「瞳子さんは信じるの?」


「うん。信じるよ。」



強く頷くと、彼女は安心したように頷いた。
そして、私の手を握る。



「瞳子さんのこと、私好きだよ。」



その言葉に、何故か胸が熱くなった。



「私も、薫ちゃんが好きだよ。」



そして、しばらく二人で、何も言わずにベンチに座っていた。

子どもなのか、大人なのか分からない子だ。
私は、そんな彼女を愛おしいと思った。