振り下げられてから、数十秒経過。 なのに、さっきの頬の痛みしか感じない。 不思議に思って目を開くと、私の目の前に男の人が立っていた。 黒い髪はとてもサラサラして、爽やかな心地のいい香りが鼻を擽る。 だ……れ? 「ひい…!」 通り魔は、強ばった顔になった。 「ご、ごめんなさいいいいいい!」 通り魔はバタバタと騒がしく、真っ暗な道を走って行った。 た、助かったの…私?