家の外にはこうやって何回も来てるんだけどなぁ。


「スズ、速いなぁ・・・」


 学校につくと、まずはスズの自転車を確認した。


 やっぱり、あった。


 教室に入るとスズは本を読んでいた。


 あれは・・・なんだろう。


 難しそうな本なぁ。


 夏目漱石だって。


 すごいなぁ。


 私はスズのほうに近づいて話しかける。


「おはよう」


「・・・・・・」


 無言で本をぺらっとめくる。


 挨拶ぐらい返してくれたっていいのになあ。


 もう。


「ねえ、おはようってば!」


 仕方がないから、本を取り上げて挨拶をする。


「・・・返せ」


 あ、本を取り返された。


 そしてまた読書に戻る。


 私のこと、いい加減無視しないでよ。


「無視しないでよ!」


 ばんっと机をたたく。


 すると教室中の視線がこっちに集まってきた。


「あ、あはは。なんでもないでーす」


 そういって笑う。


 ごまかせ・・・ないよね。


 まあ何かあると知っていても無視してくれたんだけど。


 みんな、ありがとう。


 というか、面倒なことにはかかわりたくないんだろうね。