不幸な彼と私の恋

「そう!そうなんだよ!スズって呼んでたんだけど、わかる?」


 どうやらこいつは昔の俺を知っていたようだ。


 だけど、どうしても思い出せない。


 まあ当たり前か。


 事故があったからな。


 そのせいで誰も思い出せないんだ。


 こいつは、こいつだけ思い出せるような特別な関係だったとは思えない。


「悪い、思い出せない」


とりあえず嘘をつく。


 それを言った瞬間、はたから見ていてわかるぐらいに表情が変化した。


「しょ、小学校は?私、覚えてないかな?」


 ああ、やっぱり小学校の時の知り合いだったみたいだ。


 なら、あの事を言ってさっさと遠ざけないとな。


 これからあの時知り合いだったからって近づかれても困るしな。


「悪い。俺、中学のとき事故に遭ってさ。記憶がなくなってるんだ」