「ただいま」


 中からの反応は全くない。


 私の家には親がいない。


 死んだ、というわけではなく、第一希望の高校に合格が決定した後の話で私がここに残ると言ったのだ。


 一人分のご飯を作って、食べてかたずけて、という慣れている作業をする。


 お風呂に入りながら考える。


 スズは中学生の時、事故にあって私のことは忘れているんだな。


 なんだか少し悲しくなってくる。


 あの時はなかなか、いや、かなり仲が良かったと自覚している。


 クラスが別でも一諸に帰るぐらいには仲が良かった。


 ……あれ?これって小学生じゃ別にそんなに仲がいいわけじゃないんじゃないのかな?


 普通に帰るんじゃないのかな?


 ぶくぶく、と顔を水の中に入れて考える。


「えーい!」


 声をあげてお風呂の水から顔を出す。


 悩みなんか、吹き飛ばして忘れちゃえ!


 気分もすっきりしたところでお風呂から上がる。