「なんか、普通に話してるだけって言いにくかったよね」

彼が行ってしまった後に

紫がボソッと言った。


「大崎くんの前だとなんか

優等生っぽいこと答えなくちゃいけなそうで」

と、私はいつも感じる、

何故か彼の前だと気持ちがしゃんとしてしまうような

そんな不思議な雰囲気を

紫も感じ取ったみたいだった。


「……そういえば、昨日も大崎くんに何か聞かれたな。

なんか、夏愛とあのサッカー部の本山くん?のこと!」

「へ?」

「私昨日大崎くんと講習一緒だったでしょ?」


「うん」

そういえば、2人とも同じ教室だった。


「夏愛と遼太郎くんと別れた後に、

『津浦さん、

矢上さんと彼――本山くんは何で知り合いなのかわかるか?』

って聞かれたんだよねー。

その時は話しかけられた事自体にびっくりして

夏愛に教えてもらったまま『バイト先の常連』ってこたえたけどさ、

もしかして……」


そう言って紫は私を見た。