『遼太郎くんはさ、夏愛のこと……』
紫の言葉が頭の中で回る。
「……ナツ?」
そう言って、手が伸びてきて
私はさっとリョウの方を見る。
手は頬にあたり、
私はさっきのキスされた感触が鮮明に思い浮かぶ。
座っているせいで、
昔と違い今は見上げないといけなくなっていた
リョウの顔が同じ高さにある。
少し俯いていた私は自然と彼の唇が視界に入っていて。
飲み物を飲んでいたばかりの彼の唇は
キラキラと光っていて、それがさらに私の視線を奪った。
「んー、顔赤いなー。
やっぱ熱中症かなー」
言われて気づくと
今まで感じたことのないくらい顔が熱くなっていて
私は咄嗟に頬にあたっていた彼の手をどける。
「ナツ?」
心配そうに私を見るリョウを直視しないように
私はばっと立ち上がる。
「で、電車!くるよ!」
タイミングよく駅に電車が入ってきたところで
私はふわふわする足元のままホームを進んだ。


