「あ、ありがと……」
差し出されたのは私の好きな飲み物。
そうだよね。
何の疑問もなくお互いの優しさを受け取れて
何の迷いもなくお互いの好みを知っている。
私達はそれくらい、一緒にいたよね。
なのに……、
「ナツも飲みな?」
そう言って、多分私が遠慮しないように
リョウは先に自分の分を飲み始める。
ぼーっとなっている頭で
その一連の動作を見ていると
自然と目がいってしまった彼の喉元に心臓が跳ね上がりそうだった。
飲み物を飲む動作とともに動く喉仏。
その喉に滴る汗。
私はわざと視線を逸らすために慌ててもらった飲み物に口を付ける。
「……っっ!!ごほっごほっ!!」
「わー、ナツ!大丈夫ー!?」
慌てて飲み込もうとしたものの、むせてしまう。
……なんか、なんだろう、
ドキドキで手が震えていつも普通に出来ることが出来ない。
「慌てなくても平気なのにー!」
隣のベンチに腰を下ろして、
私の背中をさする彼の笑顔は
ずっと見てきたものだった、はずなのに……
背中をさする手は私の知っている彼の手とは違う。
もう、なにこれっ!


