「私は遼太郎くん確定な気がしちゃってるけど、
もしかしたら他の人かもしれないから、
彼だって確定する前はあんまり詳しく話さないほうがいいかも」
駅でわかれる手前、
紫はふとそんなことを言った。
「え、なんで?」
私は全く見当がつかなくてそう聞くと
「だって万が一彼じゃなかった時に、
他の誰かが夏愛のほっぺにキスしたなんて知ったら、
落ち込むどころじゃない、でしょ?」
小悪魔的に私に笑いかけると
「じゃあ、真相分かったら教えてねっ」
となぜか上機嫌で、
改札を通ってしまった。
紫とは駅は同じでも
使ってる路線が違うため、いつもここでわかれる、
高1の時に知り合ってから
今までで一番上機嫌にばいばいした気がする。
きっと私が混乱してるのを楽しんでるんだ。
他人事だと思ってー!
少し憤りを感じながら
自分の使う方の路線の改札を通り、
階段を下りてホームに着く。
次の電車までは後10分で、
暑いホームの真ん中のベンチに空席を見つけ
そこに座って電車を待つ。
暑すぎて
鞄から下敷きを取り出そうと探していると
なんともタイムリーな声が。
「ナツっ!」


