先生が入ってきた。さらにざわつきが大きくなる。教室のドアのすみに人が立っている。裕太が言っていた転校生だろう。先生に呼ばれ、その子は恥ずかしがりながら一歩ずつゆっくり入ってくる。
[初めまして。転校してきました川村 美紗(かわむら みさ)です。]
それはいまにも消えそうな小さな声だった。
[よろしく!]
裕太の大きな声につづき次々にみんなが挨拶をしていく。
[じゃぁ、席は....あそこにしようか!]
先生がそう言って指差したところは裕太の隣の席だった。
その子は申し訳なさそうに音も立てずに歩いて席に行き、そーっと座った。
裕太がこっちをみてピースしてくる。
僕はただ目で合図し、読みかけの小説の続きを読み始めた。
