その手は器用にパンを指で挟みながら、手のひらに握っていたお金をおばちゃんの手のひらへと乗せる。 「毎度ありがと!」 その流れるような動きに呑まれていた私はおばちゃんの声でハッとすると、慌てて手の持ち主を探した。 たくさんの男子の隙間から辛うじて見えた、こちらに背を向ける人影。 あいつだ。絶対あいつに違いない。 ぐっとまた腰を下ろすとするすると人を掻き分けくぐり抜けた。