「……」
黒い物体の元へきた少年はその物体を見て言葉を失う。
顔は傷付き、腕は有り得ぬ方向に曲がり、それでも安らかな表情で地面に伏しているそれは少年のいる方を向いて微動だにしない。
変わり果てた少女の姿に、少年はただただ呆然とする他なかった。
「……あ、…………嗚呼……」
漸く現状を理解した脳が悲鳴を上げさせようとするも、少年の体は悲鳴より先に涙が溢れ出す。
「……何、何でだよ。なんでお前、こんな……」
少年は変わり果てた少女の頭をそっと抱くとその傷だらけの顔に口付ける。
口付けた箇所から急速に体温が下がって行き、少女はもう二度と少年のことを呼ばないのだと脳の冷静な部分が告げる。
「なんで、だよ……なんでこんなことに…………」
やはりひとりでなんか行かせるべきではなかったのではないか、少女がひとりで行くと言い張っても父は着いて行くべきだったのではないか、それ以前に父が帰ってきた時少女がいないことに気付いた自分がすぐに来ていればこんなことにはならなかったのではないか。
様々な考えが脳内を巡り少年は訳がわからないままに泣き叫ぶ。

