闇を切り裂き空気と同化しながら落ちて行く少女は、ゆっくりと目を閉じ少年の姿を思い浮かべる。
少女が苦しい時や辛い時、楽しい時はともに泣き、ともに笑い、ともに励まし合ってきた少年は、今やもう、二度と会うことのない人となってしまった。
風切り音が耳を掠め底無しとも思われた闇に漸く終着点が訪れる。
「……嗚呼」
−−−ゴスッ−−−
何やら固いものが地面に落ちたような音が響き夜鳴き鳥は一斉に羽搏く。
(お兄様、私は……)
「……貴・・・男を…………愛して」
段々薄くなる意識と視界の中、少女は最愛の人の胸に抱かれる夢を視た。

