発表が終わり少年は急いで少女の元へと向かった。
「…………嗚呼、……来てたの」
壇から降りた少女はとても冷たい、まるで道端に落ちているゴミでも見るような目で此方を見ると小さな溜め息を吐いた。
「……本当は、早くに行っておくべきだったけど、……けど、どうしても言えなかった」
「……なんで言えなかったんだよ」
少女は訥々と言うと顔を俯ける。何とか目を逸らすまいと少年は俯いた少女の顔を優しく挟んだ。
「……貴方の・・・いえ、…………やっぱり何でもない」
少女は口籠もるとフロアで待つ婚約者へと手を振り少年に目配せする。
「……わかった。じゃあ俺はもう戻るな」
「うん……またあとでね」
そう告げた少女の瞳は何かを訴えたげに揺らいでいた。

