私を一瞥して、お父様は部屋から出て行った。
私はもう一度鏡で自分の身なりを確認してから、お父様の後を追った。
ただ広い庭を抜け門の近くまでたどり着くと、
ロールスロイスが止まっている。
お父様は既に乗り込んでいるようで、運転手さんだけが外で待ってくれていて。
私は運転手さんに「すみません。」と一礼してから車に乗り込んだ。
お父様と向かい合わせに座ると、すーっと車が静かに発進する。
広い車内には私とお父様の二人だけ。
お母様は仕事が忙しくて、今日のお見合いには付き添えないらしい。
き、気まずい……
何か話さないと……!
だけど、その気まずい沈黙は私が何か言葉を発する前に、
お父様の言葉によって打ち砕かれた。
「…よく似合っているぞ。」
「……ふぇ?」
普段のお父様からは想像もつかないような言葉を聞き、
耳を疑った。