あの時の私はもちろん白馬くんも、
“許嫁”なんて関係になるなんて、思ってもみなかった。
だって、白馬くんは学園の王子様で、私はたくさんいる女の子の中の1人なのだから。
きっと、こんな関係になってなかったら
“たまに挨拶をするクラスメイト”ぐらいにしか思ってなかったし。
白馬くんからもそうとしか思われていなかったはず。
そう考えると、この瞬間はかなり貴重なんだと思う。
…なんか、せっかくだから、今日の記念になるようなものがほしいな。
カタチに残らなくたって、心に残るようなモノ。
「…あ、」
そこまで考えて、ふとあることを思いついて言葉を漏らす。
景色を見ていた白馬くんは、「なに?」と首をかしげる。
「あのね、せっかく仲良くなれたんだから、私のことも名前で呼んでよ!」
「……え?」
「だって、私だけ“白馬くん”って名前で呼ぶなんて、不公平……」