「……は、白馬くん。…怒ってる?」
「……別に。」
プイッと顔を背け、ツーンとした態度をとる白馬くんは、
さながら猫のよう。
早々に機嫌悪くさせちゃったみたいだけど、
なんだか、かわいい…なんて。
そんな子どもみたいな一面もあるんだー、
なんて少し嬉しくなった私は、立ち上がって「ふふっ」と白馬くんに微笑みを向ける。
「……なに?」
「なんでもないよ。さ、いこっ!」
怪訝そうな顔をした白馬くんの手を取り、人だかりができた
駅構内へと吸い込まれていった。
電車に乗っている時も、白馬くんは終始不機嫌そうに表情を歪めていたけれど。
満員の電車の中、
私が押しつぶされないようにと、私を囲うようにして立っていてくれた白馬くんは、
本物の王子様のように見えた。

