いつも通りの言葉だったけど、
心なしか白馬くんの頬が、少しだけ赤く染まって見えた。
「……それじゃ。」
そんな白馬くんを見て、顔を綻ばせていた私はその言葉ではっと我に返り、
教室の後ろの扉から出て行こうとする白馬くんを「…あ、待って!」と慌てて呼び止める。
いつ行くとか、待ち合わせの場所とかまだ決めてないのに…!
すると白馬くんは、教室を出る直前に1人あわあわとする私を振り返る。
白馬くんの切れ長の瞳と視線がぶつかり合う。
「……土曜日、11時に駅前。」
それだけ言うと、くるっと踵を返して教室を後にする。
私がその言葉の意味を理解したのは、白馬くんが去ってから10秒程経ったあと。
………デートの約束、しちゃった。
改めて考えると、なんて大胆なことしちゃったんだろうって恥ずかしくなる。
…でも、断られなかった。
その事実だけで、誘ってよかったって思えたの。
土曜日、楽しみだな──…。

