「…あれ、鈴木さん?」




いないならしょうがないか、と諦めて
くるりと教室の扉の方へ向きを転換した時、

突然名前を呼ばれて、声のした方へ振り向く。




「……あ、奥本くん。」




振り返った先にいたのは、爽やかな笑顔を浮かべてるクラスメイトの奥本くん。



あまり話したことはないけれど、

よく白馬くんといる姿を見かけるから、かろうじて名前は覚えてた。



…と、言うのも

名前覚えるの苦手なんです。……ごめんなさい。




うぅ…と頭を抱える私を見て、奥本くんが小さく笑う。




「ふは、鈴木さんっておもしろいね」


「ぅえ!? どこがっ?」


「だって、さっきから百面相してるからさ」




奥本くんに笑いながら言われて、ふと、昨日の芳穂さんの言葉を思い出す。



……私、そんなに顔に出やすいのかな?