他に私の知り合いで、私の家を訪ねて来そうな人と言えば…
………白馬くん?
「……いや、そんな、まさかね。」
ぶつぶつと独り言を呟きながらベッドから体を起こした私は、
執事さんの言葉を思い出して慌てて私服に着替える。
…心のどこかで微かな期待を抱いて。
「おっ、友愛。今日は早起きだなー」
客室間がある一階に続く階段を早足で駆け下りていた時、
その声で私の足はぴたっと静止する。
「…お、お兄ちゃんか。」
二階から覗くその姿を見て、ふぅと安堵のため息を漏らす。
最近、ますますお兄ちゃんとお父様の声が似てきて聞き分けが……。
そんな私をお兄ちゃんは訝しげな目で見つめる。
「…友愛、また俺と親父の声、聞き違えたろ?」
ギクッと肩を震わせる。
お兄ちゃん…鋭い……。